別れのないさよなら
「別れのないさよなら」は、認知症やワーカホリック、家庭内別居のような状況で、目の前には
その人の身体が存在しているのに心の中では「父親、母親、夫、妻」としての相手は不在となっ
ているタイプの喪失を言います。
身体は存在しているので、今は、心理的に別れてしまっているけれど、また、いつの日かこちら
のことが分かってくれる日が来るのでは?と喪失と少しの期待が混ざりあったあいまいな喪失と
なり、苦悩から抜け出すこともあいまいになります。
あいまいな喪失を抱えている方は、「私が悪いからこうなったんだ」、「バチが当たった」と自分
を責める方もいます。
私の母も父が突然死したのは、自分のせいで、今までの人生のすべてのバチが当たったと思ってい
ます。
あいまいな喪失に対処する方法は、自分を責めるのではなく、自分の中でできること、自分のことを
心配し大切に想っている方が周りにいることに目を向け、「いるけどいない」、「いないけどいる」
という矛盾するものの見方を受け入れてゆくことが大切になります。
「さよならのない別れ」と「別れのないさよなら」というあいまいな喪失があるということを知っ
ておくことは、状況の複雑さに応じて悲しみも複雑化してゆくことを予防するために役立ちます。