資金繰り㉝ 役員貸付金 ②
役員貸付金を計上した場合は、会社にお金を戻さないといけません。
戻す方法として一般的に使用されている方法は、役員報酬から毎月一定額を天引きしていく方法です。
法人カードを気付かない内に私的に使用していた場合などは、毎月の私的流用分を役員報酬から天引
きします。
役員報酬から天引きをすると手取り額が減るので、減った分として役員報酬を上げようとすると社会
保険料や役員個人の所得税や住民税の負担が大きくなります。
役員報酬は、法人税と所得税のバランスを見ながら決めるものであり、むやみやたらに上げるもので
はありません。
毎月の給与から返済してもなかなか役員貸付金が減らない場合は、ある程度まとまった金額を何回か
に分けて会社に戻してもらうようにします。
ただ、この場合は、役員個人も資金繰りが厳しいと予想されますので、思うように返済が進まないと
思われます。
このとき、なかなか返済されないからという理由で安易に会社が債権放棄をしてしまうと、債権放棄
額が役員賞与とみなされ課税されます。
もともと役員に渡っているお金なので賞与と認定されても仕方がないのですが、余計な税金を払うこ
とになります。
役員が退職するときまで役員貸付金が残っている場合は、役員退職金と相殺することとなります。
この場合も役員報酬と同様、手取り額が少なくなるので、減った分として役員退職金を増やしてしま
うと過大役員退職金の否認リスクがあります。
また、役員貸付金を消したいためだけに形式上退職したことにして、実際は、今まで通り経営に従事
しているようであれば、役員退職金そのものが否認され課税されます。
このように役員貸付金を計上してしまうと何かしらの形で返済をしないといけなくなります。
そして、返済方法を間違えてしまうと思いも寄らない課税が発生する可能性があります。
役員貸付金は、デメリットだけがありメリットはありません。